2016.3.18 帯状疱疹(へルペス)

高齢になれば免疫力も弱まりかなり多くの人が帯状疱疹(ヘルペス)に罹った経験があると思います。命取りになるような疾患ではないのですが、高齢になってから罹るほどその後の神経痛で悩まされるやっかいな疾患です。先日も「 先生、右の腰あたりがピリピリして何とも言えない痛みが2~3日前から出だしました。昨日整形外科に行ってすぐにMRIを撮ってもらったのですが、加齢による腰痛と言われました。でも、何とも言えない痛みが治まりません。」「 ちょっと、痛むところを見せてくれませんか。」Sさんは服をたくしあげて痛む腰を見せてくれました。「 あ~、なるほど。Sさん、これはヘルペスですね。よ~く見ると3つ小さな丘疹(湿疹)がありますよ。抗ウィルス薬を呑まなければ どんどん増えて火傷のように帯状に湿疹が広がり、痛みも更に酷くなりますね。薬と軟膏を出しますから、早速服用して下さい。1週間呑み切って下さいね。」「 整形外科で腰痛の薬をもらったのですがやめた方がいいですか。」「 まあ、痛み止めですから呑み続けてもらってもいいですが、神経痛にはあまり効果は期待できません。神経痛用の痛み止めをだします。」ヘルペスは、小児期に罹った水疱瘡のウィルスが消滅することなく長年潜伏(冬眠)しており、抵抗力の弱った時にヘルペスとして復活します。左右どちらか片側にしか出ません。また、電線の上にカラスが群れをなして止まるように、このウィルスは神経の上に止まるように広がるので、顔や胸~背や腹~腰など体の半周(片側)に局所的に出ます。あちこちに散ることはありません。何とも言えない、しつこい痛みが2~3日続いた後に湿疹が2~3個出だすのが特徴で、この時に皮膚科か内科を受診し、診断されれば比較的治癒は良好です。しかし、このタイミングを逃して遅れると、ヘルペス後神経痛に悩まされることが多く、ペインクリニックに数か月通院する場合が多くなります。しかし、いろんな病気ありますね。

2016.3.27 高血圧! 一度薬を飲むとやめられないという戯言

いつの時代からなのか、高血圧の薬を一度飲んでしまうと二度とやめられないという戯言(たわごと)が世に出回ってしまっている。先日も半年前に高血圧が気になりクリニックを受診されたYさんが、「 先生、暫くは血圧は安定していたのですが2か月ほど前から150mmHg以上がちょこちょこ出るようになってきました。治療は必要でしょうか?」「血圧手帳を見せてください。」「 確かに140mmHg未満の日は少なく、140~150mmHg以上の日が多くなってきましたね。そろそろ降圧剤の服用が必要かもしれませんね。」「 でも先生、血圧の薬は一度飲んだら一生やめられないのでしょ!?」「・・・?? 」 血圧の変動は、早い人で40歳前後、平均的には60~65歳あたりで高血圧と言われる値(140/90)を超えてくることが多いですね。中には80歳になっても全く血圧が上昇しない人もおられますがこれはごく一部の人達です。生活習慣がどうのこうのと立派な先生方は言われますが、私は加齢現象のひとつと考えています。顔に皺が増えるように、髪の毛の量が減るように血圧は加齢とともに上昇するものです。一部の人を除いて、いつか 血圧が 140/90 を超える時が来て、当然年々歳は増える訳ですから血圧はさらに上昇していくわけで、血圧の薬は必要となり、年々、やめれるどころか増えていくことになります。高い血圧を無症状だからと放置しておくと、脳や心臓をはじめ全身の動脈の病的変化(動脈の狭窄や閉塞、変形、瘤形成など)がおこり、7~10年後あたりに突然救急車の世話になって最早元の体には戻れない状態になってしまう危険性が高いことを覚えておかれるべきでしょう。

2016.3.30 健診、人間ドックで異常! いや正常!!

人間ドックや健診を受けて異常が認められれば医療機関の受診を勧められ、再検査や治療が開始される。しかしながら、異常と指摘されたことが実ははなから異常ではなかったということが結構ある。先日も、「 健診で糖尿病と高脂血症と言われ、再検査を受けるよう言われました。結構悪いのでしょうか? 」と健診結果を持参され診察室で相談されたFさん。「 血糖値が102、HbA1cが5.9% ですか。これは正常値ですね。総コレステロールが210、LDLコレステロールが128ですか。これも正常値ですね。」「 エッ、どういうことですか?」 健診や人間ドックでは日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が独自に健康な人から集めた検査値の分布の中央の95%を含む数値範囲を統計的に表わしたもので、なんの指標にもなりません。臨床の場で用いる判断値は、専門学会(動脈硬化学会、高血圧学会、糖尿病学会、循環器病学会など)で疫学的調査をされ、将来心筋梗塞や脳梗塞などを起こしてしまうことが予測され、予防が必要であると判断される検査閾値のことで、簡単に言えば糖尿病や高脂血症は予防を怠ると心筋梗塞や脳梗塞を来す疾患であるため、安全な値まで治療して下げておきましょうというのが臨床判断値です。この値は長年に多大なデーターを集積され検討されてきた値で、人間ドックで使う基準値とは全く比較になりません。「 Fさん、血糖値は110以下、HbA1cは6.2%以下が正常値(判断値)です。総コレステロール値は220以下、LDLコレステロール値は139以下が正常値です。ですから、貴女はともに正常ですから今の時点では心配いりません。」「 そうですか。安心しました。」「 いえいえ、高いお金をかけて健診を受けて、正常なのに異常と言われ、時間とお金を使ってクリニックを受診するなんて大損ですね 。インターネットで調べれば、各々の正常値(臨床判断値)が載っていると思いますので、これからはそれを調べてからクリニックを受診された方が良いですね(笑)