2016.2.3 脚が浮腫む

「お変わりありませんでしたか?」「先生、大変です。最近、両脚が浮腫んでしまいます。足の甲も浮腫んで靴が履けない日もあります。心臓か腎臓が悪いんですか? 娘が言ってましたが。」「確かに心臓がかなり悪くなると浮腫みが出てくる場合もありますが、日常生活が普通にできていて心臓による浮腫みは考えられませんね。腎臓の場合、過剰にたんぱく質が尿に出てしまうような病気では浮腫みがでることがあります。Mさんの場合、先日の健診で尿検査は異常なく、血液検査で腎機能は正常でしたのでこれも心配ありません。安心してください。」「では、なぜ浮腫むのですか?」「連日数名の患者さんが同じような質問をされます。一言でいえば加齢現象、老化現象ですね。」「歳を取ると脚まで浮腫むのですか?」「心臓から送られた酸素の豊富な綺麗な血液が動脈を通って全身の各臓器に流れていくことはご存知と思います。その後は、毛細血管を通って静脈に向かいます。静脈は動脈と正反対に、足の先から重力に逆らって下から上に血液が流れて行きます。静脈の中には弁(静脈弁)が何ヵ所もあって、若いころは元気に下から上にバケツリレーのように血液を心臓へ押し上げています。しかし、歳を取ると(特に、長年立ち仕事やデスクワークをしている場合)、この静脈弁の動きが悪くなり上手く血液を重力に逆らって押し上げることができなくなります。そうすると、重力に従って、心臓より下にある足、脚に血液がうっ滞して静脈が広がり、更に水分が血管から皮下に浸み出していきます。浮腫んだ脚を指で押すと指の型がついてぺこんとへっこむと思います。静脈瘤ができるのもこれが原因です。」「どうしたら浮腫みは取れますか?」「弾力性の強い膝下までのストッキング(弾性ストッキング)を履くことや、時間があれば昼に下肢を胸より高く上げて20~30分横になって休めれば浮腫みは軽快します。しかし、酷い場合は皮膚科(形成外科)で静脈の簡単な手術をすることも結構あります。心臓や腎臓で浮腫む人より圧倒的に多い原因です。」

2016.2.26 ヒートショック

最近、ヒートショックという言葉をよく耳にしませんか。浴室での突然死を指す言葉です。 いつもご夫婦で月1回、クリニックに通院され、年末に胃がんが見つかり、腹腔鏡下で胃がんの治療を受け、年始には元気に復活されたK氏。その10日後に手術を受けた外科の主治医から『 風呂場で心肺停止状態で奥さんに見つけられ、先ほど救急車で搬送されて来られましたが死亡が確認されました 』と電話連絡を受けた。絶句である。高校時代の友人のお父さんも一昨年、風呂場で亡くなられているところを見つけられた。寒い冬には高齢者の風呂場での突然死が非常に多く、年間の交通事故死の2倍ほどにも上ると言われている。暖かい部屋から寒い脱衣所で裸になり、更に寒い洗い場で今度は熱い湯をかぶってそのまま湯船に入るパターンではないかと想像する。血圧の乱高下で脳梗塞や脳出血、心筋梗塞を起こして突然死に至るなどと書かれている記事が多いが、否定はしないが殆どは失神による溺死と考える。暖かい部屋から寒い脱衣所、洗い場で血圧は上昇し、いきなり42℃程度の熱い湯をかぶり体も洗わず先に湯船につかる。今度は一挙に血圧は下がることになる。血圧が 90mmHgを一気に切れば、脳への血流は一気に減って気を失ってしまう。湯船の中で気を失うものだから溺れ死んでしまうことになる。洗い場で気を失ったのであれば溺れることはなく、間もなく気がつき何事もなかったかのように風呂を出ることになるだろう。お金はかかるが脱衣場と浴室には暖房をつけることが高齢者の場合の対策になるだろうし、熱い湯をかぶっていきなり湯船に長くつかることには十分注意することである。長湯の後、脱衣所で大きな立ちくらみを経験する人も多いと思うが、これも血圧が下がっている症状である。サウナで起こる立ちくらみもそうである。