2020.8.6 なんと稚拙なポピドンヨードの発表(大阪の恥)

昨日、大阪府知事の吉村さんが久し振りにパフォーマンスを見せた。あの有名な茶色のポピドンヨード(イソジン)がコロナウィルスに非常に効果的で、大阪府民は皆使用するようにと記者会見まで開いて生放送でTV報道された。丁度夕方の診察中に2名の患者さんがコロナの予防にイソジンを下さいなんて言ってきたのでどうしてなのかと思っていたら、自宅に帰って夜のニュースでその放送を確認した。当然、イソジンなんて無効であるとの判断で処方は断った。この一連の報道につき確認してみたが、大阪府立はびきの医療センター(元 羽曳野病院)の医者のデーター比較についての評価ミスを時期尚早に知事は発表してしまったようである。このデータ比較は非常に稚拙なもので、症例数がたった20例 vs 21例の比較である上に、比較する対照がそもそも間違っている。ポピドンヨードで日に4回うがいをした群とうがいをしていない(確認していない)群とを比較してしまっている。ポピドンヨードに効果があるか否かを評価したいなら、両群の比較は、うがいを4回/日する共通点の上で、水でうがいをした群とポピドンヨードでうがいをした群で比較しなければ意味がない。もっと言うなら、ポピドンヨードの濃度(濃さ)がどの程度であるか(本来なら、○○ml/回 群、△△ml/回 群の2群ぐらいは分けて)比較しないと全くデーター比較の意味がない。研究?のデザインの時点で稚拙過ぎて、医者に成りたての研修医以下と言っても過言ではないお粗末さである。もっと言うなら、そもそもうがいをしてから口腔内のPCR検査をすればウィルスは減っているはずで、偽陰性になるのは当たり前であり、その思いつきに首をかしげたくなる。好意的に捉えるとすれば、頻繁にうがいをすればウィルスを拡散しにくいことを言いたいのであろうが、吐き出すという意味では水で十分であるが、それならマスクをしておけばもっと拡散は防止できる。一般的には2群を比較する場合、200例 vs 200例ぐらいあれば統計的な評価もできるが、その比較数も少なすぎる。医者の世界では各々の専門分野で年1回全国の何千という病院の医者が研究部門、臨床部門で培ってきたデーターを整理して学会発表をする機会がある。当然、誰でもが発表できるわけでなく、事前に発表内容をまとめた抄録を締切期限までに学会に提出し、全国で選出されたその領域の専門医に審査され合否を決定され、合格したもののみ発表が認められる。発表できる内容はレベルも高く、今後の医療に好影響を与えることになる。私は、現役時代に日本循環器学会総会の心臓カテーテル領域のDCAという治療の審査員を最年少で任されたことがあった。提出された抄録が多く、一つ一つ細かく目を通す時間がなく、まずは抄録の症例数を一次カットライン(足切り)に設け、残されたものを内容評価して合否を決めた。一つの抄録に対し、5名の審査員で点数をつけ(50点満点)、その合計点で上位数件が決定される(現在はどうかわからないが)。このような吟味された内容の研究でも世に出るのはさほど多くはないにも関わらず、足切りにかかってしまうような内容で良くも全国的なTVに発表されたとなると医学に対する冒涜にも似た行為であると言わざるを得ない。早々にも関東地方で衛生学の教授をしている友人や九州で開業をしている友人などから私の元に、「 大阪はとんでもないことを言ってますね! 企業や患者対応で大迷惑ですよ。」なんていうメールが届く始末である。ポピドンヨードを販売している会社がちょっと嬉しかったのでは・・・。