2015.11.6 カルシウム摂取は骨折予防に効果なし!

「娘にも勧められて毎日牛乳やサプリメントでカルシウムを多く取って、骨を鍛えています。」と自信満々に69歳のYさんは話された。「やっぱり、更に歳を取って骨折して寝たきりになるのは嫌ですからね」と続けた。「確かに高齢になって転倒でもすれば大腿骨を骨折して寝たきりになることが多いですからね」。「先生、カルシウムのサプリメントはいいですね!?」。「Yさん、残念ながら中高齢者には沢山牛乳を摂ったり、カルシウムのサプリを服用しても全体の骨の強化にはごくごく少しではあるが効果があるようですが、大腿骨や上腕骨の骨折予防にはならないという結果が先日、多数の研究の成績をまとめて解析した海外論文で発表されました。」「えっ、駄目なんですか?」「はい、残念ですが転倒による太ももの骨(大腿骨)や腕の骨(上腕骨)の骨折予防には効果がないようですね。逆に、尿路結石や心血管疾患のリスクが上昇するようで、不利益の方が強いようです。健康のためと思って牛乳を飲むのでなく、美味しく飲むのが一番ですね!」。また、これも適当な根拠のないコマーシャルに振り回された結果なのですね。

2015.11.18 世界一の平均寿命は薬のおかげ

「最近、薬をのんでいるのに血圧が上がってきました。」「そうですね。気温が下がってきたし、夏のように汗をかかなくなったのでどうしても血圧はあがりますね。」降圧剤服用で、130/70mmHg前後で安定していた血圧も、Hさん本人の申告通り、この日は156/82mmHgと高値を呈していた。「Hさん、もう1錠降圧剤を追加する必要がありますね。」「先生、整形外科や眼科も含めて沢山の薬を呑んでいるので増やすのは嫌です。呑まないといけませんか。」「呑んだ方がいいですね。貴女の年齢は79歳ですね。まあ、人間が自然に生きれる限界を大きく越えていますので、薬でコントロールしないとこの先、生きていけないでしょうね。実際、世界の平均寿命を大きく上回っているわけで、薬があるから長生きできていると思って下さい。」今年のWHOの発表した世界全体の寿命の平均値は71歳。日本は女性87歳、男性80歳、男女で84歳と世界一である。これは日本人が凄いのではなく、国民皆保険により誰でも、特に高齢者が安価で医療を受け、高価な薬を服用できることにあることを理解している人は少ない。それにも関わらず薬を呑みたくないと言うなど、他国の人々から見れば、何と羨ましい贅沢を言っているものだと思われているのである。イギリス81歳、アメリカ79歳、ロシア69歳、インド66歳 …… 最下位のシェラレオネは46歳です。世界の平均値が71歳ということは、75歳以上の後期高齢者なんて世界に存在しないことになります。今の医療のあり方に、特に高齢者の皆さんは感謝するべきと思いますね。決して薬なしでは生きられませんよ!

2015.11.25 大変なこと!?

「先生、1ヶ月もの間、殆ど横になったきりで動けず大変なことになってました。」と診察室に入るや否や元気な一声。85歳になるTさん。長年、大動脈弁狭窄症による心不全の治療で診ている患者さんである。「何が大変なことでしたか?」「先月、布団を押入れに上げようとしたら、そのまま後ろ向きにひっくり返ってしまいました。骨折はなかったようですが、背中などあちこちが痛くて動くのが苦痛で、この1ヶ月間は殆ど寝たきりに近い状況でした。」「Tさん、大変なことが起こったわけではないですね。後ろ向きに尻もちをついてひっくり返ったくらいのことなど大した問題ではありませんよ。しかし、この程度で1ヶ月も寝込むことになったのは、もはや体の方が大変なことになっているわけですね。自分では元気と思っていても、体はかなり大変なことになっているので、これからも無理せず体のかなりの老化を自覚しないといけませんね!」85歳で布団の上げ下げをするなんて、凄い時代になってきましたね。そういえば、小生の84歳になる母親も自転車に乗って毎日元気に買い物に出かけている。半世紀前では想像もできない現実である。脚元に注意して、いつまでもお元気で!